【介護選び】家族の役割分担ノート
2025/02/16
ものがたりが始まる記念日
介護によって家族がチームになる
今回のはおうちデイ新聞発行責任者の田村武晴さんと一緒に「介護選び 家族の役割分担ノート」をテーマに対談します。
田村さんから色々ご質問いただいた中で、「家族サービスがなかったらどうなってるんだろう」というお話がありましたよね。昨日も家族の揉め事や心の負担、体の負担についてお話ししましたが、それを見ながら、介護選びについてもう少し深掘りしたいと思いました。
そうなんですね。どうしたら解消できるんでしょうか?
もちろん、困っている人は相談に乗ってくださいというところもありますが、それだけでは足りないと思いました。家族の役割をしっかり構築できる仕組みがあれば、改善できるんじゃないかと思ったんです。
家族の揉め事や不安、お金の問題など、色々ありますよね。田村さんの情報の中で、そういう仕組みはありますか?
家族の役割分担という意味では、既存のサービスはないと思います。ただ、介護に関しては、制度から見ていくものと、目の前で困っている人を助けるためのリアルな支援があると思います。
なるほど。目の前の人を助けるために何ができるか、という視点ですね。
そうです。接骨院で患者さんとして来られる方の中には、親の介護で腰を壊したり、寝不足で体調を崩している方がたくさんいらっしゃいます。そういう方たちを助けるために、何ができるかを考えてきました。
制度があっても、目の前の人が助けられない場合もありますよね。でも、私たちにできることは、声をかけたり、話を聞いたり、背中をさすってあげたりすることです。それが現場でできることです。
そういう視点から、積み上げていこうと思っています。歳を取ったことがないから、何が困っているのかわからないんですよね。でも、制度的にこういう制度がなければ困る、ということはあります。
その中で、家族の役割というのは非常に大きいです。それを明確にしているものは多分ないと思います。地域の方たちが、それぞれできることを一生懸命やっているので、それを集約的にまとめて伝えるものはないんです。
例えば、隣の家のおばあちゃんのご飯を作ってあげている若い人もいます。そういう助け合いが実際に介護を支えているんです。
そういうことをまとめて、こういうのがあるんだよ、というのを伝えることができたらいいなと思っています。
とても興味深いお話でした。子供食堂とかもありますし、元々介護は家族のものだし、支え合いが村社会では当たり前のことでした。でも、都市化や核家族化が進む中で、それが少し変わってきています。
介護サービスという公的なものと、地域で介護を支えるものがありますが、やはり対象単位は家族だと思います。でも、家族だけでは難しいので、色々考えていく必要がありますね。
例えば、特別養護老人ホームのケースですが、家族の中で役割分担を作った人がいます。最初は厳しい目で介護を指摘してくる人でしたが、職員たちとやり取りをする中で、理解してくれるようになりました。
その方は、姉妹3人でお父さんの介護をしていました。
お父さんが変わったんです。娘さんたちが必死に支えようとしているのを見て、お父さんの表情が柔らかくなりました。
家族の心を動かしたんです。家族ってそんなもんだと思うんです。
1人で頑張っていると、お父さんが笑わなくなっちゃったな、と思っていたけど、職員と笑顔で話しているのを見て、何年ぶりかに笑顔を見た、ということがありました。
そして、家族が3人いると、それぞれに役割があります。
例えば、孫が土日に来て、おじいちゃんと会話する役割を担うこともあります。そういう風に、家族全員で役割分担をすることで、介護が始まったら、それが始まるんだ、という風に思いました。
介護が始まったら、家族のチームが編成される。それが1つのトレンドになるといいなと思います。自分の介護が家族が仲間になって、仲良しになるチャンス。それが介護の価値だと思うんです。
遠く離れて暮らしている家族が、親の介護でチームになって、もう一度チーム編成をする。それっていいなと思いました。
終活という言葉がありますが、財産整理したり、いろんなことをされる方がいらっしゃいます。でも、家族としての関わり方も終活ですよね。その視点が家族から見た就活というのが、とても必要なんだと思います。
看取りも介護ですし、相続や遺言、墓前など、幅広いです。私は終活ではなく「総括」という言葉を使っています。人生を総括する、まとめる、という感じです。
家族の役割分担ノートができあがると、歴史が残ります。みんなで支え合った歴史が日記のように残る。それが財産だと思うんです。
家族の役割分担ノートは、総括ノートです。お父さん、お母さんの総括ノートをみんなで作り上げていく。日記みたいなこともできます。
施設で言うと介護記録です。
介護士や看護師、栄養士が書いたりする記録です。
家族の介護記録もいいですよね。
今日は娘が買い物に行った、とか、旦那さんが病院に行った、とか、孫たちがお部屋の掃除をした、とか、そういうのがどんどん残っていく。
親の介護で家族の意見の食い違いで揉め事が起きるのは、情報の違いなんです。
いつも来てくれている身元引き受けには情報提供しますが、離れている家族には一部しか伝わらない。与えられている情報が違う中で、同じ答えを引き出すのは難しいです。
情報共有して、意見の食い違いを1つにまとめる作業が絶対必要です。
みんなで決めたんだったら、それに従おう、という風に決めていく。民主主義というと大げさですが、みんなで決めることです。
そのためには情報の共有が必要です。介護記録を見てください、ということもやってました。離れて暮らしている兄弟も含めて、情報を共有する。手紙が届いて、笑っていた、とか、ご飯を食べた、という情報が手紙を書いた人に戻ったら、また手紙を書こう、と思うかもしれません。
役割分担ノートは、情報の共有が重要です。
家族の揉め事もなくなるでしょう。開くたびにワンポイントアドバイスがあったり、コラムがあったりするといいですね。
孫の役割も重要です。
例えば、大学生の孫がパソコン得意なら、日記を整理する係りになってもいいです。
写真を撮って送ってくれ、と言ったら写真撮影係り。音声を録音して送ってくれ、と言ったら音声収録係り。全部役割です。
Googleドキュメントを使うとか、Facebookページを作るとか、家族だけの介護グループを作るとか、そういうツールを使って情報共有するのもいいです。
施設では介護記録が義務です。在宅でも施設でも、介護記録はやっています。
でも、それを家族全員で見る権利はありません。身元引き受け以外の家族には見せられないんです。
だから、そういうことも踏まえながら、きちんとした仕組みを作れたらいいと思います。
情報の共有が目的なので、記録として残るものを繋いでいけるといいですね。
家族の不安も共有できたら、大変なんだな、と思えるでしょう。
私の母も86歳で、LINEでやり取りしています。介護を受ける方がSNSを使える時代になると思います。
Facebookページを作って、家族が動画を撮ってメッセージをあげると、母も自分で見に行ける。そういうSNSを活用した介護ができるといいですね。
デイサービスに来ている人が20人いたら、全員Facebookページに登録できて、家族もそこに入れる仕組みがあったら、情報の価値もあると思います。
介護保険ソフトでも、Facebookのようなものがあって、職員室で入力するだけでなく、通院に行ったら「病院に着きました」と投稿する。そういう使い方もあると思います。
家族の役割を分担するという明確なテーマがあれば、使いこなし方が変わるかもしれません。
デイサービスの機能を入れようと思ったのは、週2回デイサービスに通っていると、週5日はどうしているかわからないからです。週5日もデイサービスのようなことができたらいいな、と思いました。
在宅に必要なものは、ポータブルトイレとか、介護制度の使い方とか、いろいろありますが、家族の役割分担ノートができるというのは、聞いたことがないです。
介護サービスは点ですが、ケアマネージャーさんの仕事は点を線にすることです。ケアマネジメントの概念はそこにあります。
80歳以上の人は介護認定を受けている人が8割9割います。90歳になるとほとんどの人が介護認定を受けています。年を取れば取るほど、介護の制度の必要性が出てきます。
その時には、制度を使いながら、家でも役割分担があると安心です。そういう仕組みがたくさんあるのに、生かしてないですよね。
必ずこういう話をすると、SNSは使えないとか、高齢者には無理だ、という話になります。でも、だからこそ孫が必要だと思うんです。
「孫仮説」というのがあるといいと思います。職員たちが一生懸命やってきたのは、孫を呼ぶことでした。看取り期がへ入った時に、孫に対して「いのちの教育」をするためです。
「お母さんが頑張って生きているんだから、孫を連れてきてください」、と言うと、本当に連れてくるんです。孫も受け止めてくれます。
いのちを伝えているおじいちゃん、おばあちゃんがいて、孫たちがそれを理解する。そういう教育は大切です。
孫がいなければ、代わりに誰かが孫の代わりをするだけです。家族で1人の場合でも、介護保険サービスを上手く使いこなすことを伝えたいです。例えば隣の人は家族がたくさん来ているから、あなたも家族に変わってください、という風に言えます。
老人ホームでも在宅でも、家族の役割は同じです。
介護の始まりがコミュニティの始まりという記念日になるといいなと思います。
介護の始まりが人生最悪の日じゃなくて、新たな「ものがたりのリスタートの日」になるといいなと思います。
仕組みを作って、ビジネスにできないかな、と考えています。
ネーミングはまだ仮称ですが「スマイルiKaigo介護ノート」です。情報共有ノートは、笑顔を作り出すためです。
1人で抱えない、家族同士がぶつからない、意見の食い違いが起きない、起きても1つにまとまる方法論として、情報を共有する。そのためのやり取りが記録として残って、命が繋がっていくツールがある。それが今日伝えたかったことです。
田村さんとディスカッションできて、とても素敵なお話ができました。また、思いつきですが、記憶の再生というのもあります。積み重ねてきた記憶が、新しい投げかけによって再生されていく。脳科学的な言い方ですが、そういうこともあります。
是非また議論して、考えながらお仕事してください。ありがとうございました。